博士、最近、脂肪肝の改善方法について悩んでいるんです。何か良い方法はないでしょうか?
おお、サトウ君、それは良い質問じゃ。実は、最近の研究で、一日おきの断食と運動を組み合わせることで、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が改善できることが示されておるんじゃ。
断食と運動ですか?具体的にどのように効果があるんですか?
うむ、この研究では、成人のNAFLD患者が3ヶ月間、断食と運動を組み合わせたプロトコルに従った結果、肝臓の脂肪量が大幅に減少したんじゃ。具体的には、断食と運動の組み合わせで肝臓の脂肪量が5.5%も減少したのじゃよ。
それはすごいですね!他にどんな効果があったんですか?
体重、脂肪量、ウエスト周囲径も減少し、ALTという肝臓の酵素のレベルも低下したのじゃ。また、インスリン感受性も向上したんじゃよ。
なるほど。それで、そのプロトコルはどのようなものなんですか?
断食日は600 kcalのみを摂取し、運動は中等度の有酸素運動を週に5回、1回60分行うのじゃ。断食日と通常の日を交互に繰り返すんじゃよ。
断食と運動を組み合わせることは、断食だけや運動だけよりも効果があるんですか?
興味深いことに、断食と運動を組み合わせた場合、運動だけよりも肝臓の脂肪量の減少が顕著であったが、断食だけと比較すると有意差はなかったんじゃ。つまり、断食だけでもかなりの効果があるということじゃな。
分かりました。試してみる価値がありそうですね!博士、ありがとうございます。
どういたしまして、サトウ君。いつでも相談に乗るから、気軽に質問してくれ。
研究の内容を詳しく解説
この研究は、間欠断食(ADF)と有酸素運動が非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に与える影響を調査しています。具体的には、間欠断食と有酸素運動の組み合わせが、断食のみ、運動のみ、または対照群に比べてどのように肝内トリグリセリド(IHTG)の含量に影響を与えるかを評価しました。
研究方法
1.被験者の選定:
- 80名の肥満およびNAFLDを持つ成人を対象とし、年齢は23歳から65歳、81%が女性。
- 被験者は4つのグループにランダムに分けられました:間欠断食と有酸素運動の組み合わせ、間欠断食のみ、運動のみ、対照群。
2.介入内容:
- 間欠断食(ADF): 断食日(600 kcal摂取)と自由摂取日を交互に設定。
- 有酸素運動: 中程度の強度の有酸素運動を週5回、1回60分実施。
- 組み合わせ群: ADFと有酸素運動の両方を実施。
- 対照群: 生活習慣の変更なし。
3.評価指標:
- 主な評価項目: IHTG含量の変化(MRI-PDFFで測定)。
- 副次評価項目: 体重、脂肪量、ウエスト周囲径、ALTレベル、インスリン感受性など。
主な結果
1.肝内トリグリセリド(IHTG)の減少:
- 組み合わせ群では、IHTG含量が5.48%減少し、運動群(1.30%減少)および対照群(0.17%減少)に比べて有意に減少しました。
- ADF群との比較では、組み合わせ群は2.25%減少し、統計的には有意ではないが、減少傾向が示されました。
2.体重と脂肪量の減少:
- 組み合わせ群では、体重が4.58%減少し、運動群(2.11%減少)および対照群(0.60%減少)に比べて有意に減少しました。
- ADF群との比較では、体重の減少に有意差は見られませんでした(ADF群は5.06%減少)。
3.インスリン感受性の向上:
- 組み合わせ群では、断食インスリンレベルが有意に減少し(9.59 mIU/mL減少)、インスリン抵抗性も改善しました(HOMA-IRが2.55減少)。
- インスリン感受性(QUICKI)は、組み合わせ群で有意に向上しました(0.04増加)。
4.肝線維化および肝酵素:
- 肝線維化スコア(FIB-4)やASTレベルの変化は、群間で有意差がありませんでした。
- ALTレベルは組み合わせ群で有意に減少しました(5.97 U/L減少)。
研究の意義と今後の展開
この研究は、間欠断食と有酸素運動の組み合わせがNAFLDの治療に有効であることを示しています。特に、肝脂肪含量の減少、体重減少、インスリン感受性の向上が確認されました。今後の研究では、長期的な介入効果の評価や、異なるタイプの運動と断食の組み合わせの効果をさらに検討することが重要です。また、個別化された介入プログラムの開発が期待されます。
用語解説
- 間欠断食(ADF): 断食日と自由摂取日を交互に設ける食事法。
- 有酸素運動: 中程度の強度の持久的な運動。例:ウォーキング、ジョギング、サイクリング。
- 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD): アルコール摂取に起因しない肝臓の脂肪蓄積。
- 肝内トリグリセリド(IHTG): 肝臓内の脂肪含量。
- ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ): 肝臓の健康状態を示す酵素。
- HOMA-IR: インスリン抵抗性の指標。
- QUICKI: インスリン感受性の指標。
研究の出典
【題名】Effect of alternate day fasting combined with aerobic exercise on non-alcoholic fatty liver disease: A randomized controlled trial
【著者名】Mark Ezpeleta, Kelsey Gabel, Sofia Cienfuegos, Faiza Kalam, Shuhao Lin, Vasiliki Pavlou, Zhenyuan Song, Jacob M. Haus, Sean Koppe, Shaina J. Alexandria, Lisa Tussing-Humphreys, Krista A. Varady
【掲載誌】Cell Metabolism
【掲載日】2023年1月3日
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