低・中所得国では幼児期の直線的成長が鈍化している?

サトウ助手
サトウ助手

博士、最近、低・中所得国の子どもたちの成長が気になっています。特に幼児期の成長が鈍化しているという話を聞いたのですが、詳しく教えてもらえますか?

ハクガク博士
ハクガク博士

もちろんじゃ。最近の研究では、低・中所得国における幼児期の直線的成長が非常に早い段階で鈍化していることがわかっておる。この問題を調査した論文によると、0~24か月の子どもたちを対象にした32の縦断研究を分析し、幼児期の成長鈍化の典型的な発症年齢を特定したんじゃ。

サトウ助手
サトウ助手

へぇ、それはどのくらい早い段階なんですか?

ハクガク博士
ハクガク博士

この研究では、成長鈍化の発症が最も多いのは生後3か月までの間で、特に南アジアでは出生時から既に高い割合で成長鈍化が見られるとのことじゃ。

サトウ助手
サトウ助手

出生時からですか?それは深刻ですね。なぜそんなに早く成長が鈍化してしまうんでしょうか?

ハクガク博士
ハクガク博士

理由の一つは、母体の健康状態や栄養状態が影響しておるんじゃ。例えば、妊娠中の栄養不良や感染症は、胎児の成長に大きな影響を与えるんじゃよ。また、出生後も栄養不足や不衛生な環境が子どもの成長を妨げる要因となっておる。

サトウ助手
サトウ助手

つまり、妊娠中のケアも重要なんですね。それで、対策としてはどのようなことが考えられるんでしょうか?

ハクガク博士
ハクガク博士

研究では、女性の妊娠前および妊娠中の健康状態を改善することが重要であると強調されておる。例えば、妊婦へのミクロン栄養素とマクロン栄養素の補給、女性の自主性と教育の向上、そして家族計画の推進などが有効な対策とされておる。

サトウ助手
サトウ助手

なるほど。では、生後の介入も重要ですよね?

ハクガク博士
ハクガク博士

その通りじゃ。特に生後6か月までの間の介入が重要で、母乳育児の促進や、衛生環境の改善が含まれる。ただし、この研究では、成長鈍化を防ぐためには早期の介入が特に効果的であることが示されておる。

サトウ助手
サトウ助手

早期介入が鍵ということですね。とても勉強になりました。博士、ありがとうございました。

ハクガク博士
ハクガク博士

どういたしまして、サトウ助手。何か他に質問があれば、いつでも聞いておくれ。

研究の内容を詳しく解説

この研究は、低・中所得国(LMICs)における幼児期の直線的成長障害(スタンティング)の発症と持続性について調査しています。世界中で5歳未満の子供1億4900万人がスタンティング状態であり、これにより病気のリスクが増加し、認知発達が阻害され、死亡率が高まります。この研究は、32の縦断的コホート研究をプールして、0~24ヶ月の子供52,640人を対象に、直線的成長障害の典型的な発症年齢と再発率を特定することを目的としています。

研究方法

  • データベース構築:世界29カ国から集められた6600人以上のデータを用いて、1987年から2017年の間に実施された32のコホート研究を分析。
  • 測定方法:二重標識水法を使用し、0〜24ヶ月の子供たちの直線的成長障害の発症率、逆転率、および成長速度を測定。
  • 評価基準:世界保健機関(WHO)2006年の成長基準を使用して、成長障害の発生率と逆転率を評価。

主な結果

  • スタンティングの発症率:生後0〜3ヶ月の間に最も高く、特に南アジアでは出生時のスタンティング率が高い。
  • 逆転率と再発率:0〜15ヶ月の間で逆転は稀であり、逆転した子供も再発することが多い。
  • 地域差:南アジアで最も高いスタンティング率が見られ、次いでアフリカ、ラテンアメリカの順。

研究の意義と今後の展開

この研究は、幼児期の直線的成長障害を予防するための介入が、妊娠中および生後早期に焦点を当てる必要があることを示しています。特に、妊娠可能年齢の女性の健康改善と、生後6ヶ月未満の子供に対する介入が重要です。また、南アジアの女性の栄養状態と衛生状態の改善が、子供の成長改善に重要であることが示唆されています。

用語解説

  • スタンティング:身長が年齢に対して2標準偏差以上低い状態。
  • 二重標識水法:安定同位体で標識された水を経口投与し、尿中の同位体の上昇率と減衰率を測定する方法。
  • LAZ(Length-for-Age Z-score):年齢に対する身長のZスコア。成長基準に対する偏差を示す。

研究の出典

【題名】Early-childhood linear growth faltering in low- and middle-income countries
【著者名】Jade Benjamin-Chung, Andrew Mertens, John M. Colford Jr, 他
【掲載誌】Nature
【掲載日】2023年9月21日

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