ヒトのIQは年々減少している?

サトウ助手
サトウ助手

博士、最近なんだかニュースで「ヒトの知性が減少しているかもしれない」っていう話題を見たんですけど、どうしてそんなことが起こるんですか?知性って普通、世代が進むにつれて向上するものじゃないんですか?

ハクガク博士
ハクガク博士

うむ、サトウ助手。それは「フリン効果」という現象に関する話じゃな。20世紀を通じて、多くの国でIQが上昇し続けたことを指すんじゃが、近年になってその傾向が逆転し始めたという報告がいくつか出ておるんじゃ。

サトウ助手
サトウ助手

ええ!?逆転って、つまりIQが下がってきているってことですか?どうしてそんなことが起こるんでしょうか?

ハクガク博士
ハクガク博士

うむ、実に興味深い質問じゃ。この論文では、ノルウェーの1962年から1991年までの出生コホートを対象に、軍の徴兵データを使って分析しておる。結果として、フリン効果の増加、転換点、そしてその後の減少が全て家族内の変動から回復できることが示されたんじゃ。つまり、兄弟間の知能スコアの変動が原因ということじゃな。

サトウ助手
サトウ助手

ふむふむ、それで具体的には何が原因だと考えられているんですか

ハクガク博士
ハクガク博士

この論文によると、環境要因が主な原因と考えられておる。例えば、教育の質や栄養状態、病原体のストレスが減少したことなどがフリン効果の向上に寄与しているんじゃ。しかし、最近のフリン効果の低下については、教育の標準が低下したり、移民の影響が考えられておるんじゃが、この研究では家族内の変動を完全に説明できているため、移民や遺伝的な要因が主要な原因ではないと結論付けておるんじゃ。

サトウ助手
サトウ助手

なるほど、環境要因が大きいんですね。でも、教育の標準が下がるとIQが下がるって、具体的にはどういうことですか?

ハクガク博士
ハクガク博士

例えば、学校の教育内容が簡略化されたり、学習の質が低下したりすると、子供たちの知的発達に悪影響を及ぼす可能性があるんじゃ。また、テレビやメディアの影響も考えられる。これらが知的刺激を減少させることで、結果的にIQの低下に繋がっている可能性があるんじゃ。

サトウ助手
サトウ助手

そうなんですね。それじゃ、私たちができることって何かありますか?

ハクガク博士
ハクガク博士

うむ、良い質問じゃ。まずは、教育の質を向上させることが重要じゃ。家族や学校での学習環境を改善し、子供たちに適切な知的刺激を与えることが必要じゃ。また、栄養状態の改善や健康管理も重要じゃな。社会全体で子供たちの知的発達を支える環境を整えることが大切じゃよ。

サトウ助手
サトウ助手

分かりました、博士。とても勉強になりました。環境要因がこんなに大きな影響を与えるなんて驚きです!

ハクガク博士
ハクガク博士

うむ、わしも常に新しい発見に驚かされるよ。これからも一緒に学んでいこうじゃないかのう。

研究の内容を詳しく解説

この研究では、20世紀に観察された人口知能指数(IQ)の上昇傾向である「フリン効果」が最近では鈍化または逆転していることが確認されています。ノルウェーの出生コホート(1962-1991)のデータを用いて、フリン効果の観察、転換点、およびその後の減少が家族内の変動から完全に再現できることが示されました。これにより、IQの低下に関連する主要な仮説のうち、家族間の遺伝的要因や環境要因の影響は否定されます。

研究方法

  1. データ収集: ノルウェーの徴兵検査データを使用し、1962年から1991年に生まれた男性の認知能力スコアと家族関係情報をカバーする管理登録データを分析。
  2. 分析方法: 家族内の変動を用いた固定効果モデルを使用し、フリン効果の増加、転換点、減少を推定。
  3. 仮説の検証: フリン効果が家族内の変動から完全に再現できるかを確認し、家族の構成の変化が影響を与えていないことを証明。

主な結果

  1. フリン効果の再現: 家族内の変動から、フリン効果の観察された増加、転換点、およびその後の減少を完全に再現できた。
  2. 家族の構成変化の否定: 家族の構成の変化がフリン効果に影響を与えていないことが確認された。これにより、移民や遺伝的要因がフリン効果の低下に寄与していないことが証明された。
  3. 環境要因の影響: フリン効果の増加と減少は、主に教育の質や栄養状態などの環境要因によるものであることが示唆された。

研究の意義と今後の展開

この研究は、知能指数の変動が環境要因によって引き起こされることを示し、遺伝的要因や移民の影響を排除する新たな証拠を提供します。特に、知能指数の減少が一時的な環境要因の影響であり、遺伝的な傾向ではないことが示されました。今後の研究では、教育の質や栄養状態などの具体的な環境要因をさらに詳しく調査し、知能指数の変動メカニズムを解明することが重要です。

用語解説

  • フリン効果: 20世紀に観察されたIQの世俗的な増加傾向。
  • 家族内変動: 同じ家族内でのIQスコアの変動。
  • 固定効果モデル: 特定の要因が一定であると仮定して変動を分析する統計モデル。
  • 環境要因: 教育の質や栄養状態など、遺伝的要因ではなく環境によって決定される要因。

研究の出典

【題名】Flynn effect and its reversal are both environmentally caused
【著者名】Bernt Bratsberg, Ole Rogeberg
【掲載誌】Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)
【掲載日】2018年6月26日

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