1日に必要なエネルギーは加齢に伴い大きく変動する?

サトウ助手
サトウ助手

ハクガク博士、最近エネルギー消費について興味があるんですけど、年齢によってどれくらい変わるのか知りたいんです。特に、子どもから高齢者までの違いについて教えてください。

ハクガク博士
ハクガク博士

おお、サトウ君、それは非常に興味深い質問じゃ。最近の研究で、エネルギー消費がどのように年齢によって変わるかが詳しくわかってきたのじゃよ。

サトウ助手
サトウ助手

それは面白そうですね!具体的にどういう結果が得られたんですか?

ハクガク博士
ハクガク博士

この研究は、世界29カ国の6600人以上を対象にしたものなんじゃ。生後8日から95歳までの人々のデータを集めて、総エネルギー消費量を分析したのじゃ。例えば、10代後半で総エネルギー消費量が最も高く、その後わずかに低下して60代までは一定の値を示しておったんじゃよ。

サトウ助手
サトウ助手

なるほど、若いときはたくさんエネルギーを使うんですね。でも、乳児もエネルギーをたくさん使うって聞いたことがあります。それって本当ですか?

ハクガク博士
ハクガク博士

その通りじゃ。乳児は体格から予想されるよりもはるかに多くのエネルギーを必要とするんじゃよ。生後12ヶ月の間に急増し、1歳の誕生日には大人に比べて50%も速くエネルギーを消費するんじゃ。体重がわずか10kgの乳児が、1日に約1000kcalも消費するのは驚きじゃろう?

サトウ助手
サトウ助手

本当に驚きですね。それじゃあ、年を取るとエネルギー消費はどうなるんですか?

ハクガク博士
ハクガク博士

中年期の代謝の減速は緩やかで、年にわずか0.7%じゃ。60代まではあまり変わらないが、90代になると中年の人よりも1日当たりの必要なエネルギーが26%も少なくなるんじゃよ。これは、筋量の低下や細胞・組織レベルの代謝の低下が原因と考えられておる。

サトウ助手
サトウ助手

なるほど、中年期にはそれほど減らないのに中年太りがあるのはなぜなんでしょう?

ハクガク博士
ハクガク博士

それは良い質問じゃ。総エネルギー消費量の減少だけでは中年太りを説明できないのじゃよ。おそらく、生活習慣や食生活、運動不足など他の要因も関係しているんじゃろうな。

サトウ助手
サトウ助手

とても勉強になりました!この研究の結果は、将来の健康管理や食事の計画にどのように役立つんですか?

ハクガク博士
ハクガク博士

この研究で得られた総エネルギー消費量の数値は、将来の世界の食糧問題の解決や持続可能な食糧供給システムの構築に役立つんじゃ。また、エネルギー消費量に基づいた適切な食事指針を作るためにも重要なデータじゃよ。

サトウ助手
サトウ助手

本当に大事な研究なんですね。もっと詳しく知りたいので、またいろいろ教えてください!

ハクガク博士
ハクガク博士

もちろんじゃ、サトウ君。またいつでも質問してくれたまえ。

研究の内容を詳しく解説

この研究は、29カ国の6600人以上を対象に、年齢に伴う1日に必要なエネルギー消費量がどのように変動するかを明らかにすることを目的としています。従来の研究は主に基礎代謝に焦点を当てていましたが、この研究では、総エネルギー消費量を調査し、成長や日常生活のエネルギー需要を包括的に評価しています。

研究方法

2014年に始まったこの国際共同研究プロジェクトは、二重標識水法を用いて、6600人以上の生後8日から95歳までのデータを収集し、総エネルギー消費量を測定しました。データベースは2018年12月に構築され、総エネルギー消費量の年齢別変動を分析しました。

主な結果

  • 総エネルギー消費量の絶対値:10代後半で最も高く、男性で3415±605 kcal/日、女性で2480±478 kcal/日でした。その後、60代まではわずかに減少し、一定の値を示しました。
  • 体格調整した総エネルギー消費量:乳児が最も高く、生後12か月間に急増し、1歳で大人に比べて50%速くエネルギーを消費していました。
  • 中年期の代謝減速:年にわずか0.7%の減少が見られ、中年太りは総エネルギー消費量の減少だけでは説明できないことが示唆されました。
  • 高齢者のエネルギー消費:90代の人は、中年の人よりも26%少ないエネルギーを必要としました。

研究の意義と今後の展開

この研究は、ヒトの代謝が生涯にわたってダイナミックに変動することを示し、エネルギー需要の理解を深める上で重要な成果を提供しています。今後は、身体活動と筋量の関係、発展途上国のエネルギー必要量の推定、エネルギー代謝と気温との関係、水分摂取の必要量の推定など、多様な研究が進められます。

用語解説

  • 総エネルギー消費量:1日に消費する総エネルギー量(kcalまたはMJ)。基礎代謝、食事誘発性体熱産生、身体活動によるエネルギー消費量の合計。
  • 基礎代謝:生命維持に必要なエネルギー量。安静時に消費される最小のエネルギー量。
  • 二重標識水法:安定同位体で標識された水を経口投与し、尿中の同位体の上昇率と減衰率を測定することで、1日の総エネルギー消費量を測定する方法。

研究の出典

【題名】Daily energy expenditure through the human life course
【著者名】Pontzer H, Yamada Y, Sagayama H, 他
【掲載誌】Science
【掲載日】2021年8月13日

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